2016年4月29日

折り目正しき儀式殿




黄色いもやがかかったように、うつろに淡い青空を、夕焼け色の石組みが遮る。

かくまで古い建築物でさえも、長命な生物が濶歩するこの地では、遺跡と呼ぶにはまだ早い。



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高地ドラヴァニアの北部。

「餌食の台地」という、少々物騒な名前がつけられた台地。
辺りにうろつくドラゴン族が、その「餌食」を食べる者なのでしょうか。

この台地にある、円筒形の巨大な建築物は、ご覧の通り、雰囲気満点なので、写真を撮ったり散歩したりにもってこいです。



例によって、なにげなくおさんぽにやってきた私。

壮大な景色に圧倒されつつも、いつものようにあちこち見て回っていて、ふと気づいたのです。

どうもこの建物、一見すると向きも何もない円形のように思われますが、
じつはちゃんと建物の軸というものがあるということに。


・・・


「フスィー、こいつぁ何を言っているのか分からないぜ」なんて見捨ててはいけません!

生き物の身体に前後左右があるように、この建物にも「向き」があったのだというお話です。




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上の写真では、円形の建物の南西地点に、私はいます。

この建物には、かつて四方に玄関があり、ここがその一つだったような気がしています。


そう考える根拠は2つ。


まず一点は、ここから建物に入ると、ちょうど真向かいのところだけ、壁が少し高く作られているのがご覧いただけるはずです。


まるで、祭壇にでも使っていたかのように見えませんか?

もし祭壇だったとしたら、こういう大事そうな建物は、
つるんと円形に作るより、対称性をもって作りたくなるでしょ!という推測から。


この、「少し高い壁」は、四方に同じようにあったのかもしれません。
ただ、残る三方の壁が破損しているため、かつてどうだったのか、もはや検証しようがないのが残念です。







それから二つ目。

高いところから見下ろすと一目瞭然、中心から四方に向けて4つの階段があります。

(さっきの一枚目の写真を撮った「玄関」の場所は、こっちの写真で左下に見える小陸地です)

これらは全て、中心から見ると上り階段になっています。

崩れて分かりにくいですが、南西(この写真の左側)も上り階段でした。



壁に刻まれた彫刻や、アーチ型の装飾も、基本的に左右対称に作られています。

ほらね。








壊れる前の玄関はどんな雰囲気だったのかな? と思って、もう一度、玄関まで戻ってきました。


だいぶ崩れてしまって、しかも水路になってしまっていますが、足元にわずかに石組みが残っていますね。

かつては人が出入りするのにちょうどいいサイズの石門があったようなのです。


ここがもっとも損傷が激しいのは、門を作ったことで、構造的に少し他より弱かったのかな?



こちらの方角には、ソーム・アルの山道と、不浄の三塔が望めます。
うーむ、何か意味があるだろうか・・・



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この建物をどう使っていたのかは定かではありません。

長生きで、由来を知っていそうなドラゴン族たちに聞けばいいと思うでしょう?
でも、こういうことにはあまり興味ないようで、尋ねたところで何の役にも立ちません。

おそらく、彼らは飛べるし、身体が大きいし、力も強いので、
建物も儀式も、彼らの生活には重要ではないでしょうから。



きっと、弱い生き物が、強い何かを恐れながらも敬うときに、この左右対称の建物を建てたのです。

たぶんね。






考え事をしながらうかうかおさんぽしてたら天気が悪くなってきちゃった・・・



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2 件のコメント:

  1. 不浄の三塔と対になってそうな建物ですよね。あっちはドラゴンたちの住処として作られたものだから、こっちは人間のためのものだったのかな?そうなると徹底的に破壊されているのもうなずけますし。
    コミュニティ放送でいつか取り上げてくれないかなぁ?

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    1. そのあたり、神の記した電撃の書にも詳しく触れられていないのです…
      不浄の三塔は人々がドラゴン族と接する、発着場としての施設だったようですね。
      周辺に人向けサイズの建物があるところを見ると、
      これだけ大きい建物は、ドラゴン族向けか、ドラゴンと人との接点になる場所だったのかなー?

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