湖底に眠るは見知らぬ歴史。
泳ぐ練習しておいてよかったなー。
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内乱に沈んだアラミゴ末期、最後の王となった「廃王」テオドリックにまつわる噂を聞きました。
その名も「廃王の黄金」。
なんでも、廃王は猜疑心が強い人物だったようで、王位を保つために大勢の王族を処刑したそうです。
ところが、そのときに接収した財産がどこかに隠されたまま、30年間経った今でも見つかっていないのだとか。
そんな頼りない噂をネタに、こっそりとお宝探しを始めた私のもとに情報が舞い込みました。
泳げない男の嗅覚が捉えたお宝の匂いは、なんと湖底から。
「栄光に溢れ、美しくしなやかで、素晴らしく泳げるみよよ様、お願いですから行ってきてください」
「しっかたないなあ、ほら、イモでもかじって待ってろ」ってなもんです。
ザブーン!
目指したのはやはりギラバニア地方、ロッホ・セル湖の底でした。
アラミゴの街からそう遠くない塩湖です。
深い水中で見つけた洞窟を抜けると、これまで見たことのない、遺跡が眠っていました。
元々は渓谷に築かれた都市だったという小国、スカラの遺跡だそうです。
いいねいいね!
湖底だけあって、水がさらさらと辺りを流れています。
あれ? いずれ完全に水没しちゃうってこと?
建築は石造り。
あちこち見ていきましょう。
石柱の一つに茂っているのは、植物・・・?
地上でよく見るような緑色ではなく、明るいピンク色をしています。
日が差さないからかな?
石柱に絡みついているツタらしきものは、何本かが束になって走っているように見えます。
よそでは見ない、珍しい風情ですね。
むしって持って帰ったら誰か調査してくれないかな。
ゆくゆくはお家に植えることができたらいいなあ。
湖底の洞窟でありながら、クリスタルの放つ光でぼんやりと明るく、探険には不自由しません。
ありがたい。
むむむ!
細い石柱で支えられた、タマネギのような石の屋根。
この形、あれに似ている!
(「コイナクは地名じゃない」より)
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そうそう、これこれ。
こっちのほうが似てるかも。
思い出したのはアラグ帝国の遺跡でした。
(「土地に紐付いた歴史マップをつくろう」より)
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約5000年前に興り、4000年前頃に滅んだとされます。
一方のスカラは、第五星歴の初頭のギラバニア地方にあった小国です。
第五星歴が始まったのが、アラグ帝国の崩壊から1000年後。
今からすれば約3000年前。
スカラがいつ滅んだのかは判っていませんが、少なくとも数百年は続いたとされます。
要するに、この二つの国の存在していた時期は重なっていないわけですよ。
建物の形が似ているのは、単なる偶然か、私のかんちがいか。
(たぶんかんちがいでしょうけど。)
できることなら、「スカラ時代にはまだアラグ遺跡が地表に出ていて、それを見て真似た建築家がいた」なんて経緯だったらロマンがあるのになー。
スカラ時代にはここは湖底じゃなく峡谷だったそうだし、ありえなくもない話と思いませんか。
などと夢を見ながらぶらぶら歩いていると、また見つけました。
細い石柱とタマネギ型のモチーフが、壁面の装飾にもあしらわれていました。
赤い石や黒っぽい石でふちどられていますね。
この形は、神聖さとか高貴さを表したのかな。
それとも繁栄や守護といった、呪術的な祈りが込められていたのかな。
石造りのアーチで天井を支えたホールもありました。
アーチ部分を彩る彫刻が美しい!
わかる、わかるよ!
いいよね! タマネギ!
(つづく)
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アラグ建築の名残かー。ロマンありますね。
返信削除現在のアラミゴも似たような様式の建物なので、この地方にはもうすっかり浸透した建築方法なのかなぁ。