帆のない柱に 人の風吹け
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珍しい相手からお仕事の依頼がありました。
どこの国にも属さず、紅玉海を牛耳る海賊衆。
その頭目である、ラショウさんです。
ラショウさんによれば、海賊衆の集落近くに出現した穴が、オノコロ島にそびえる謎の巨塔の内部につながっていることが判明しました。
彼らが試しに入ってみると、そこは奇妙な力で制御された迷宮になっていて、魔物がうろついていたとか。
そういうわけで、力のある冒険者に、アメノミハシラという巨大な建造物に突入してほしいというのがその依頼内容でした。
彼らの表情を見ると、この依頼には裏がある気がするけれど、おだてられるのは気分がよろしい。
まっ、任せなさい。
紅玉海に残る神話には、アメノミハシラのことがこう述べられているそうです。
「神代の時代、最初に紅玉海に降り立った神々は、オノコロ島を創り、そこへアメノミハシラを築いた」と。
天から地へと、神々を導く階段という説もあるとか。
ともかく、神様にまつわる神聖な場所として、長らく禁足地(立入禁止)にされてきました。
えっ、それ、よそ者の私がホイホイ入って良いの?
まあまあ、細かいことはいいから! 海賊衆もちょっとだけ入ってみたし!
というやりとりの末、アメノミハシラの内部に入ることになりました。
さてさて、内部はというと、思いのほかきれいに、というよりは豪華に装飾されていました。
例えば、このふすま。
真っ黒な墨で輪郭線を描き、面を埋める五色の彩色の豊かな濃淡で、海の生き物を立体的に描き出しています。
きれーい。
ふすまの中にはお布団が・・・ではなく、小さな飾り棚がありました。
まるで、祭壇のようです。
明るく輝く円形の鏡を中央に据え、左右に奇妙な旗飾りを4本立ててあります。
実はこのふすま絵も、祭壇も、紅玉海の深海に眠る紫水宮でそっくりなものを見ました。
紅玉海の住人から奉納されたものでしょうか?
柱にのぼることしばし。
珊瑚で覆われた生けすがありました。
お金持ちの趣味です。
それなりに階層をのぼってきたのに、まだまだ海の香りがします。
もっとのぼらなきゃ。
お金持ちの道を。
大きな歯車のカラクリが、これ見よがしに機能していました。
何のために動いているんだろう?
換気?
これはもう、飾り付けと言うほかありません。
とある部屋にあったのは、鮮やかな模様の番傘、みごとな焼き物の壺、違い棚、小さな行灯。
壁に掛けられた額には、クガネの文字で「わざ」と書かれていました。
ここの魔物と戦って、技を磨きなさいということかな?
別の部屋には、「ちから」の文字。
そうだな! 力をつけなければ!
おっと、これは・・・
2本の角と髭をそなえた、不気味なお面を見つけました。
魔除け?
左右の掛け軸は水墨画です。
左のはどこだかはっきりわかりませんが、右の特徴的な島影は、紅玉海の火山島「獄之蓋」でしょう。
廊下の途中にも、飾り付けのスペースが設けられていました。
ここは日用品が中心ですね。
座布団、文机、鏡台、キャビネット。
何度か危ない目に合いながら、ついに30階へ!
そこは大広間になっていました。
山なりの天井、円い窓から見える青空。
窓の少し下、壁には松の木彫。
・・・松?
大広間で待ち受けていた魔物をやっつけ、休憩スペースに到着しました。
ようやくひと段落です。
この休憩スペースも、ここまでの道のりと同じく、明らかに人の手が入っていますね。
食品か飲料水か、お酒でも入っていそうな樽。
そして、天水桶。
天水桶は、雨水を集めて掃除にでも使っているのでしょうか。
米俵もたくさん。
そうそう、後ろの白い垂れ幕にご注目。
右の、丸い三つ巴紋は、クガネでよく見かけますね。
詳しくは知りませんが、クガネの都市章、または、ひんがしの国の国章だと私は思っています。
左には、さっきの大部屋にもありましたが、これまた松の意匠が描かれています。
クガネで松といえば、初代クガネ奉行「松葉家」です。
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いろいろ見て歩くと、この塔の30階までは、クガネが管理しているということが明らかになってきました。
「神聖」「禁足地」とか言ってもったいぶっていたくせに、まるでお屋敷のようにきれいで歩きやすいとは・・・
観光地?
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